マンションの管理組合に呼ばれました。これは瑕疵なのか劣化なのかを判定して欲しいとのことです。
バルコニー腰壁外側のタイルが浮いており今にも落下しそうです。
落下して被害が生じれば、責任は所有者・管理者の管理組合にあります。
クラック誘発目地は、タイルの膨張に追従する役目も担いますが、このフレームの中に縦目地が1本も無いことが気になります。
共用廊下手摺壁のコンクリートにクラックが発生しています。以前に埋められた跡があり、幅は0.2~0.3mm程度です。
集会室には、外壁劣化診断の専門調査会社(赤外線と打診併用)と売主、施工会社、管理会社、理事会の面々が揃っていました。
壁には、各立面の外壁調査結果が拡大されて貼ってあります。
タイルが浮いている面積は、見た感じ20%を超えていそうです。
・・・・・どうしましょう。
まずは、タイルの剥がれから片付けます。
このマンションの1階柱においては、過去左写真のようにクラックが入り、崩れ落ちそうだとのことで、一面のタイルを貼り替えたとのことです。
アフターサービス基準では、外壁タイルに関して2年間でしたが、築後7年目の今年初め、売主は無償で貼り替えてくれたそうです。
宅建業法上は、瑕疵担保責任期間は2年以上となっています。
品確法上はどのような判断になるのでしょうか。品確法では、
① 構造耐力上主要な部分
② 雨水の浸入を防止する部分
に対して、10年間の瑕疵担保責任期間を住宅供給者側へ求めています。
外壁・内壁タイルは、構造耐力上の構造部材ではなく仕上げ材ですが、外壁タイルは、防水性能上は重要な機能を持っています。
外壁タイルのひび割れ等が原因で、居室に雨漏りが発生すれば、10年間責任は供給者側にあるものと考えられます。
施工者は、少なくとも10年間メンテナンス無しで雨漏りしない性能を外壁タイルに作り込んで引き渡す責任があると思われます。
タイルをはがした状態の上の写真は、躯体コンクリートにクラックがある場合、内部鉄筋の錆の進行を阻む物が無いことを示しています。
剥がれ落ちそうなタイルは、仕上げ材としての機能を果し得ていないという言い方もできるかと思います。
躯体コンクリートのクラックがタイルのひび割れに繋がらないよう、クラック誘因目地を設置することが必要となります。
タイル仕上げの外壁の断面では、防水性能を持つものは多くの場合タイルだけですから、タイル目地の劣化による雨水侵入を防止するためには、撥水性コーティング剤等の塗布が有効となります。
タイル目地からの浸入雨水が凍結することで、多くの場合タイルの浮き・剥がれを引き起こします。
10年目から12年目に行う大規模修繕工事では、平均的には3%程度のタイルのひび割れと浮きに応じて、タイルの貼り替えを管理組合負担で実施します。
大規模修繕工事の前に実施する外壁劣化診断にて、全くひび割れ個所や浮き現象の無いタイル壁には、出会ったことが無いのも事実です。
売主は劣化を主張し、管理組合は瑕疵を主張することになりますが、10年目までのタイルのひび割れと浮き・剥がれは、外壁に占める割合に応じて、責任負担分が決められるものと考えます。
10年目までのタイル貼り替え費用分の損害賠償請求を提訴するようなことになれば、裁判所において住宅供給者側が、劣化に依ることだと証明する過程において、責任負担分が明らかになることが期待されます。
①の雨漏りは、不具合の結果が比較的容易に顕在化しますが、②の構造耐力上の不具合は容易には顕在化しないので、予防的手入れが不可欠です。
従って、裁判所による外壁タイルのひび割れ等に関する瑕疵の認定には、非常に大きな興味を持ちます。
③ 固定されるべき建材は、強固に固定されていること。
タイルが落下したり、手摺が欠落すると人命にかかわります。住宅と言うより、建築物が持つべき基本的性能ではないでしょうか。
100%クラックが発生しないコンクリートを打設することは困難ですから、クラックが発生しても雨漏り や構造耐力の低下を引き起こさないように設計・施工をする事が、長寿命のRC造に繋がります。
貼り替えられたタイルですが、クラック誘発目地はありませんでした。
心配です。
このマンションの施工会社は、クラック誘発目地の有難みを理解していないようです。
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