住宅瑕疵担保履行法とは、正式には「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(平成19年5月30日法律第66号)と言います。
今年10月1日以降に引き渡される住宅に適用されますので、供給者/取得者双方共に関心を深めていただく必要があります。
住宅の品質保証のための法整備は、近年、目覚しく、目を見張り、一目置くものがあります。
制度の整備だけでは、安全・安心で価値ある住宅建築を担保できるとは限りませんが、器として味方に付けたいものです。
法律用語を噛み砕き、ものにするための覚書として、今後連載します。
● 特定住宅瑕疵にある「住宅」とは
品確法(第2条第2項)で言う新築住宅のことです。
建設工事完了の日から1年未満で、まだ人の居住の用に供したことのないものを言います。
売買では、契約日が建設工事完了の日から1年未満のものです。
建物用途としては、賃貸マンションは含まれますが、
・老人福祉法の対象となる特別養護老人ホーム等:住宅ではない
・介護保険法の対象となるグループホーム等 :住宅
・障害者自立支援法の対象となるケアホーム等 :住宅
宿泊施設として営業するホテルは、含まれません。別荘は住宅で含まれます。
民間賃貸住宅のみならず公営住宅や公務員宿舎なども含まれます。
● 特定住宅瑕疵にある「瑕疵」とは
構造耐力上主要な部分と雨水の防水にかかる部分(下図:国交省提供)の瑕疵を言います。
上図以外の部分の瑕疵(特定住宅瑕疵以外の瑕疵)に瑕疵担保責任がないということではありません。
1年から5年程度で契約書に、保証期間・アフターサービス規準として明記されてあることがあります。(記載が無ければ民法適用:責任期間は、請負契約の場合、鉄筋コンクリート造・鉄骨造の場合10年、木造5年)
宅建業法上の売買取引では、2年以上とされます。
民間(旧四会)連合約款による請負契約書は、その27条で、瑕疵担保期間として、木造建物の場合は引渡日から1年間、鉄筋コンクリートの場合は2年間(ただし瑕疵が請負人の故意または重大な過失によって生じたものであるときはそれぞれ5年間、10年間)とする定めておりますので、瑕疵担保期間は実務上は民法(5年間、10年間)で定める期間より短くなっている場合の方が多いと思われます。
民法上売買契約における瑕疵担保請求権は引渡し時に隠れていた瑕疵を知ったときから1年間(宅建業法では引渡し日から2年)保持されますが、目的物の引渡しのあったときから10年間が経過すれば、消滅時効により請求権は消滅することになります。(条文に明記はされていないが、判例等による)
中古住宅の売買(個人)では、通常何ヶ月かの瑕疵担保期間が特約により設定されますが、双方の合意があれば現状確認のみで瑕疵担保期間を0とすることも考えられます。古い住宅で個人が瑕疵担保責任を負うのはリスクが高いですから。
請負契約では、瑕疵(滅失・毀損)が発生してから1年間、請求権が保持されます。
ところで、2年や10年の期間内に、権利を行使するには、内容証明付で発送する事をお勧めしますが、2009年2月28日で、「配達記録」は廃止されています。
基本料金:80~120円
+一般書留:420円
+内容証明:420円(2枚目以降は250円増)
+配達証明:300円
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瑕疵担保責任とは
契約の目的物に瑕疵(欠陥)があった場合に、これを補修したり、瑕疵によって生じた損害を賠償したりする責任のことをいいます。
この法律では、新築住宅を供給する事業者が、図の瑕疵に対する10年間(建設工事完了の日からで宅建業者からの引き渡しからではないことに注意)の
瑕疵担保責任を負っています。
資力確保の義務は、取得者に引渡してから10年間です。
瑕疵担保責任が終了すれば、資力確保の義務は、10年を経ずに終了する場合もあると考えられます。(宅建業者からの売買)
引渡し時に存在した瑕疵を根拠として、請負工事業者に引渡し時から修補や損害賠償の責任を課すもので、この瑕疵の存在の有無を問わないアフターサービスとは異なります。
アフターサービスは、その期間を工事契約の当事者間の合意により保証書等に定めます。損害賠償は含まれないのが通例です。
住宅瑕疵担保履行法は、この瑕疵担保責任を確実に履行するための資力確保措置(保険加入または保証金供託)の事業者への義務付け等を定めています。
年間500戸の新築住宅を引渡す住宅供給業者の供託金のイメージ(国交省より)
次回は、新築住宅を供給する事業者とは・・・を予定しています。
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指定住宅紛争処理機関は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関です。「建設住宅性能評価書」が交付された住宅の紛争であれば、住宅性能評価書の内容だけでなく、請負契約・売買契約に関する当事者間の紛争の処理を扱います。紛争処理の手数料は、1件あたり1万円です。
但し、引渡し時に、住宅品質確保法で言う「新築住宅」でなければなりません