住宅版エコポイント制度では、エコ住宅の新築において,
「b) 省エネ基準を満たす木造住宅 」と共に
a) 省エネ法に基づくトップランナー基準相当の住宅
をポイントの発行の対象としています。
省エネ法のトップランナー基準(省エネ+α(高効率給湯器等))相当の住宅
という住宅の具体像が次第に明らかになりつつあります。この1行を理解するには、
■ 省エネ法
■ トップランナー基準
■ 高効率給湯器
■ 相当 とは
という語彙の持つ意味を解明せねばなりません。
1979年制定の省エネ法は1998年京都議定書の議論を背景に、大幅な改正がなされました。
特に民生・運輸部門のエネルギー消費の増加を抑えるため、エネルギーを多く使用する機器ごとに省エネルギー性能の向上を促すための目標基準(「トップランナー基準」)が設けられました。
トップランナー基準は、「エネルギー多消費機器(自動車、電気機器、ガス・石油機器等)のうち省エネ法で指定するもの(「特定機器」と言います)の省エネルギー基準を、各々の機器において、基準設定時に商品化されている製品のうち最も省エネ性能が優れている機器の性能以上に設定する」というものです。省エネ法の特定機器に指定される要件は次の3点となっています。
1.我が国において大量に使用される機械器具であること。
2.その使用に際し相当量のエネルギーを消費する機械器具であること。
3.その機械器具に係わるエネルギー消費効率の向上を図ることが特に必要なものであること
(例えば、エネルギー消費効率の改善余地、社会的要請等があること)。
2006年4月には、3.5トン超の重量自動車(バス・トラック)、液晶・プラズマテレビ、ジャー炊飯器、電子レンジ及びDVDレコーダーが新たに特定機器として追加されました。また、2006年9月には、家庭用エアコンディショナー、電気冷蔵庫及び電気冷凍庫のトップランナー基準の改定が行われました。特定機器は、2006年9月現在、21品目が対象とされており、今後さらに対象機器の拡大や各機器のトップランナー基準の見直しが検討されています。
改訂2006年9月版 トップランナー基準早わかりより
ここで言われているトップランナー基準の対象は機器でしたが、住宅版エコポイント制度ではこれを様々な建材や設備機器の集合体である住宅にまで対象を広げようとする定義・考え方のようです。
国土交通省と経済産業省のコラボレーションが期待されます。
エコキュートや太陽光発電設備は、今の所特定機器とはされていませんが、
(1) 省エネ判断基準を満たす外壁、窓等と高効率給湯設備(併せて
節湯器具を設置)
(3) 省エネ判断基準を満たす外壁、窓等と太陽光発電設備
を備えた住宅が、トップランナー基準相当の住宅の一例として挙げられています。節湯(せつゆ)器具と言うものがあったんですね?(初耳)
平成20年時点での一般的な設備を備えた場合のエネルギー消費量と比べ、概ね10%の削減が条件とされていますが、太陽光発電設備を備えていない住宅と比較すると10%のエネルギー消費量削減は容易と考えられますので、太陽光発電設備は、国や地方行政庁による100万円程度の設置補助金に加えて、住宅版エコポイント制度の30万円(予想)が期待できそうです。(重複取得についてあまり明確には記載されてはいない様な気もする)
事業仕分けで太陽光発電補助金にメスを入れた民主党RE?女史の目に留まるまでの時限的ポイントになる可能性を感じます。
新築住宅のトップランナー基準とは、『住宅事業建築主規準』(IBEC)を指すようです。
住宅事業建築主規準は建売住宅向けの省エネに関する新基準で、Web上で一次エネルギー消費量の基準達成率が算定出来ます。
規準相当については、どこが10%程度の一次エネルギー消費量削減量を公平・理論的に判定できるのかについての不安が残ります。
「住宅事業建築主の判断の基準」では、住宅事業建築主に対して全国平均で規準の「基準一次エネルギー消費量(単位 1年につきギガジュール)」を満足することが求められています。エコポイント対象住宅は1件ごとに満足する必要がありますから、ここのところが「相当」の意味を指しているのかも知れません。
■ 国交省 住宅版エコポイント制度の概要について 最終更新日:平成21年12月24日
(2) エコ住宅の新築
次のa)又はb)に該当する新築住宅をポイントの発行の対象とします。
a) 省エネ法に基づくトップランナー基準相当の住宅
外壁、窓等の断熱性能に加えて、給湯設備や暖冷房設備等の建築設備の効率性について総合的に評価して得られるエネルギー消費量が、省エネ法に基づく住宅事業建築主の判断の基準(以下「トップランナー基準」という。)相当(※2)に適合する新築住宅を対象とします。
ポイントの申請には、上記基準に適合することについて登録住宅性能評価機関等の第三者機関による証明を受ける必要があります。
(参考)トップランナー基準
トップランナー基準で求める水準は、省エネ判断基準を満たす(※1)外壁、窓等を有する住宅に、平成20年時点での一般的な設備を備えた場合のエネルギー消費量と比べ、概ね10%の削減に相当し、例えば、
(1) 省エネ判断基準を満たす外壁、窓等と高効率給湯設備(併せて節湯器具を設置)
(2) 省エネ判断基準を満たす外壁、窓等と熱交換型換気設備や高効率空気調和設備
(3) 省エネ判断基準を満たす外壁、窓等と太陽光発電設備
(4) 省エネ判断基準を超える高い断熱性能を有する外壁、窓等
を備えた住宅などが、考えられます。
b) 省エネ基準を満たす木造住宅
省エネ判断基準を満たす外壁、窓等を有する木造住宅を対象とします。
木造住宅であるかどうかの判断は、確認済証、建築工事届等において、「主たる建築物の構造」が「木造」と記載されているかどうかによるものとします。
ポイントの申請には、上記基準に適合することについて登録住宅性能評価機関等の第三者機関による証明を受ける必要があります。
※1 省エネ判断基準を満たすとは以下の基準のいずれかに適合することです。
・住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物
の所有者の判断の基準
・住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針
※2 トップランナー基準相当とは以下のいずれかに適合することです。
(一戸建ての住宅の場合)
・住宅事業建築主の判断の基準
(共同住宅等の場合)
・エコポイント対象住宅基準(共同住宅等)
高効率給湯設備・節湯器具・高効率空気調和設備等 については、
エコポイント対象住宅基準(共同住宅等)における等とは、長屋、重ね建て住宅、連続建て、店舗付住宅を含むという意味のようです。
「品確法」という世界で、一定の意味を持つ用語で、一般の消費者には判り難い表現です。法律とはそういうものですが。
トップランナー基準の主旨(関連情報参照)からすれば、シンプルに年間一次消費エネルギーがある値以下(地区毎)となる住宅を対象とする事も考えられるのではないでしょうか。
・・・簡易計算ソフトが必要となりますが。
一次エネルギー消費量の基準達成率で判定する事とすれば、トップランナー基準
相当の判断基準を作成する必要は無かったでしょうが、共同住宅用の住宅事業建築主の基準は未だ無いようです。これがあればもっとすっきりした制度設計にすることが出来たのではないでしょうか。
売電を加味すれば、太陽光発電により年間一次消費エネルギーを0とする住宅もあり得ます。
残る課題は、慎重で公正な判定と検査になると考えられます。
戸建住宅に対する基準を整理すると
■ 木造住宅
省エネ基準(平成11年基準) 又は、
住宅事業建築主の基準
■ 木造住宅以外
住宅事業建築主の基準
共同住宅等に対する基準を整理すると
■ 木造住宅
省エネ基準(平成11年基準) 又は、
エコポイント対象住宅基準(共同住宅等)
■ 木造住宅以外
エコポイント対象住宅基準(共同住宅等)
となります。(リンク部分がトップランナー基準相当)
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■
トップランナー基準の特徴 ECCJより
機器のエネルギー消費効率の基準の決め方として大きく3つの方法がある。即ち、対象とする機器の全ての製品が基準値をクリアすることを目標とする最低基準値方式、対象となる機器の全てが平均値としてクリアすることを目標とした平均基準値方式、それと基準値策定時点で最も高い効率の機器の値を超えることを目標とした最高基準値方式(トップランナー基準)である。
最低基準値方式として、現在世界で最も広く取り入れられている方式は最低エネルギー消費効率基準(MEPS: Minimum Energy Performance Standard)である。この最低エネルギー消費効率基準では、対象となる機器の全ての製品が超えなければならない最低の値を定め、超えられない場合はその製品の出荷を差し止める等の措置が取られる。この方法は一見極めて分かり易いが、全ての製品が超えるべき値を設定するには経済的妥当性について評価が十分なされる必要がある。最低基準値方式を採用している米国においては、基準値策定までの間LCA評価を始めとして経済的妥当性に関する評価が様々な角度から検討されている。また、最終的には製造事業者側の意向が反映される等全てが論理的判断による訳にはいかず、基準値の決定に調整を要し策定までに長期間を要する。
2番目の平均基準値方式は、我が国の省エネ法成立時に機器のエネルギー消費効率として取り入れた方式である。目標値は、製造事業者等からの情報(ヒヤリング、関連資料の提出等)に基づき、技術的改善の可能性、区分ごとの改善が全体の改善に及ぼす寄与度などの要因を考慮して任意に決められる。この方式では、目標年度に対象とする機器が、製造事業者毎、区分毎に出荷台数の加重平均で目標値を達成すれば良いこととされる。従って、この方式に依れば、エネルギー消費効率より他の性能に重きを置いた機器に需要がある場合は、その機器のエネルギー消費効率が基準値より劣っていた場合でも、市場に出荷することができることとなる。即ち、その機器の同一区分の製品で基準値より高効率な機器を出荷することにより、平均値として基準値を達成すれば良いわけである。この方式は、製造事業者等の自主的活動を促すための目標基準値としては充分機能するものであるが、基準値設定が任意的であるため、その基準により省エネルギー効果は大きく左右される。
地球環境問題の高まりにより、省エネルギーへの期待と役割が大きくなり、エネルギー消費機器のエネルギー消費効率を可能な限り高めることが要請されるようになった。この様な背景から生まれたのがトップランナー基準である。これは、基準値策定時点において市場に存在する最もエネルギー効率が優れた製品の値をベースとして、今後想定される技術進歩の度合を効率改善分として加えて基準値とする方式である。当然の事として目標基準値としては極めて高いものとなるが、達成の評価方法としては平均基準値方式と同じく出荷台数による加重平均として基準値を超えれば良いものとなっている。加重平均値を用いることの意味合いは平均基準値方式と同じであり、製造事業者等がよりエネルギー消費効率の優れた機器を開発するインセンティブに繋がるとの意図がある。何よりもこの方式に依れば、設定する目標基準値が明確であるので、基準値策定のための検討がスムーズにでき、検討開始から基準値設定までに要する期間が短くて済むことである。一方で、機器の製造事業者等に対しては、技術的、経済的に相当の負荷を掛けることになるので、基準値達成の可能性等についての事前のネゴシエイションを業界内で充分取ることと、基準値を達成した商品の販売促進策を取ること等が重要となる。
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「新築住宅」に関する「エコポイント対象住宅証明書」発行業務のご案内 日本ERI㈱
■ 省エネルギー性に関する基準(省エネルギー対策等級4)の概要
住宅金融支援機構 フラット35Sより